ハレトケブログ

現場での学びを記します。

就活の「型」としておすすめしたい『確実内定』(書評)

先日、就活に関する書籍をまとめた記事を書いた。意外にも多くの方が読んでくれたようでとても嬉しい(ありがとうございます)。

 

www.tomarunao.com

 

これを書くきっかけは、トイアンナ氏の『確実内定』という書籍の出版発表だ。記事内にも書いたが、「就活は正解のあるゲーム」「就職活動が面白いほどうまくいく」という触れ込みにゾッとし、ハウツー以外の「働く」に関する本を紹介したくなった。就活で勝つことも大事だが、大学時代に「働く」についてよく考えておくことの重要性を誰かに伝えたかった。

 

あれから1ヶ月。僕は師走の新宿である書店に入った。お目当ての雑誌をレジに運ぶと、レジ前に積まれた『確実内定』が目に留まる。内容も読まずしてゾッとしてしまっただけに、事実確認は責務だと思い立ち、購入を決意した。

 

就職活動が面白いほどうまくいく 確実内定

就職活動が面白いほどうまくいく 確実内定

 

近くのドトールに入り、就活生でもないのに『確実内定』を広げ黙々と読む。ブックカバーを断ってしまい、周りの目を気にする中、一時間半ほどで読み切ることができた。事実確認の結果、内容は非常に現実的なものでゾッとするようなものではなかった。

 

大言壮語感の強いタイトルと、堅実路線の内容とのギャップに衝撃を受ける。「就職活動が面白いほどうまくいく」というフレーズは失礼を承知で胡散臭すぎる。僕が学生ならこの手の書籍にこのフレーズが付いていたら、確実に購入を避けるだろう。しかし、この書籍で示される就活指南は、夢物語でもなく、事項啓発でもなく、シンプルに就職活動のプロセスを分解して、プロセスごとに気をつけるべきことを、社会人の視点から解説している。

 

以下は本書を読んだ直後の感想である。

 

 

要は、けっこうおすすめしたい本なのである。よって、ここに書評をまとめる。

 

概要

就職活動は能力よりも、ルールを知っているかどうかで内定が決まる。例えば、エントリーシートの文章はどの順番で書くべきかハッキリ文法が決まっており、筆記試験も数十時間の対策をすれば高得点を狙える。また、面接も正しい服装や声の大きさ・スピードを知るだけで、通過率は何倍にもなる。これらの攻略法さえクリアできれば、就活はゲームと言っても過言ではない。

これが本書の根幹にある主張である。「就活がゲーム」というビッグワードを冠に、そのゲームのルールを解説することが本書の構成である。

 

著者は「もっと就職活動を簡単に終えられたのではないか」という自身の後悔に端を発して、WEBメディア・オンライン講座で1,000人以上の学生たちの就活支援をする中で自ら編み出した就職活動攻略法を磨き上げてきた。その攻略法を多くの学生に伝えることが本書の目的とされている。

 

「ゲームのルール」はプロセスごとに細かく解説されている。大枠の章立ては以下のとおりで、就活で直面し得る課題を概ねカバーしていると言って良い。

 

  • 就活の基礎知識
  • 自己/企業分析
  • エントリーシート
  • OBOG訪問とリクルーター面談
  • グループワーク
  • 面接

 

それぞれの場面でどのように対処すべきかを論じる中で、就活の抽象的な部分を「形あるもの」として切り出すことが志向されている。つまりはフレームワーク化されており、実際のアクションに取り入れやすい。例えば、以下のようなものが解説される。

 

<企業が求める人材の3要素>

  • 自主的に動ける人間
  • 他人と協働できる人間
  • 数的成果を出す人間

 

<企業が求める5つの強み>

  • 協調性
  • 外向性
  • 好奇心の強さ(開放性)
  • 情緒安定性(神経症傾向)
  • 勤勉性

 

<エントリーシートの文法>

  1. 数的成果を伴う結論
  2. 結論へ至るまでの同期と課題は何だったか
  3. どうやって協働を通じ解決したか、具体的な行動
  4. 結論を繰り返し、字数が余れば成果を追記

 

他にも「こういう質問が来たら企業側の意図はこういうこと」「常に20社選考中の状態をキープするための考え方」「OB・OG訪問でのNG質問と推奨質問」など、就活のさまざまなケースで取るべき対応が型化されている。まさに攻略法の解説本と言える。

 

総評

就活に関する本は総じて評価が難しい。試験のように確固たるプロセスや合格基準が存在しないため、一概に方法論を評価することが難しいためだ。企業によっても、面接官によっても評価基準が異なるケースが多い。また、企業側の論理は一切公表されず、合否が何によって決まるかは誰にもわからない。つまり、エビデンスに基づいて明確な何かを語ることが難しい領域である。これに準じて、就活に関する著作は著者の体験を論拠にしている点が多く、客観的な評価が難しい。

 

この点は本書も同様である。主張の根拠は著者の経験による部分も多い。細かい部分で粗を探せば「本当にそうなのか?」という箇所を少なからず指摘することができる。

 

しかし、私はこれを逆説的に捉えて評価したい。つまり、エビデンスに基づいた主張がしにくい領域において、ひとつの型を示したのが本書といえる。就活という領域、特に就活のハウツー領域では、私が知る限り、これまで確固たる方法論は述べられてこなかった。

 

エントリーシートや面接など一部のプロセスを切り出した方法論や、自己啓発的な自分探し論がはびこり、就活全体を網羅する型化は進んで来なかったのではないか。これは先に述べた通り、個人の経験に依拠することが多く、確固たることが語りにくい領域だからだと考えている。

 

そんな状況に一石を投じたのが本書だと捉える。市況から就活全体の各プロセスに至るまで「こう捉えるべき」「こう対処すべき」という型が細かく定義されている。それは著者の経験と著者が見てきたサンプルを根拠としたもので、すべての人にとっての真実ではないかもしれない。しかし、れっきとした一説である。

 

「自由」が謳われる欧米社会では意外と型が重視されることが多い。文章の書き方はアカデミック・ライティングの考え方によって矯正され、本の読み方もクリティカル・リーディングによって規定され、プレゼンテーションの流れも同様に型をインストールさせられる。外資系企業のマニュアルには日系企業のそれとは比べものにならない緻密さがある。サッカー大国であるスペインでは細かなシチュエーションに合わせて選手がどのような判断をすべきかがアカデミー時代から刷り込まれている。型というのはいわば先人の知恵であり、そこからスタートする活動の中に自由がある。

 

そんなことを本書を読んで考えさせられた。限られた時間の中で結果を出すことが求められる就活において、体験によってゼロから攻略法を体得していくことは無謀であるが、実はけっこう多くの学生がこれをやってきている(10年前の私です)。だからこそ型を用いてショートカットする必要がある。型は万能ではないかもしれないが、確実に土台にはなる。そんな土台として本書をおすすめしたい。

 

また、企業側の論理を解説している点も非常に好感を持てる。社会人にとっては当たり前の論理だが、学生が就活の中でそれを察することは意外と難しいからだ。

 

ネガティブな面も一部記載しておく。文章校正が不十分に感じる点が何点かある。ただし、間違った文章というレベルではない。また、私個人としては本書に書いてあることをすべて完璧に実践しようとすると破綻する可能性を感じた。それくらいやるべきことは多いという事実の裏返しでもある。大学3年の前半までに本書を手にできれば十分に準備し切れるかもしれない、と感じるレベル感である。

 

いずれにしても、就活の全体像を把握する「大局観」を手に入れ、状況に応じて企業論理(大人の論理)を踏まえた判断基準を手に入れるためには本書の一読をおすすめしたいことに変わりはない。タイトルで怪しい本だと思ってすみませんでした。